ナパとソノマのA.V.A:混同しないための完全ガイド
カリフォルニアワインを楽しむ上で避けて通れないのが、ナパバレーとソノマカウンティのA.V.A(American Viticultural Area)です。しかし、この2つの産地は隣接しているため、A.V.Aを混同してしまうことがよくあります。
「これってナパ?それともソノマ?」 「Los Carnerosはどっち?」 「Knights Valleyはナパじゃないの?」
そんな疑問を持ったことはありませんか?この記事では、ナパとソノマのA.V.Aを正しく理解し、混同を避けるための実践的な覚え方を解説します。
ナパとソノマの基本的な違い
まず、2つの産地の全体像を理解しましょう。
ナパバレー(Napa Valley)の特徴
地理:
- 面積: 南北35マイル(約56km)、東西5マイル(約8km)の細長い谷
- 位置: サンフランシスコの北40マイル
- 栽培面積: 45,275エーカー以上
- サブA.V.A数: 18(2024年時点)
ワインの特徴:
- 主要品種: カベルネ・ソーヴィニヨン(圧倒的)
- スタイル: 力強く凝縮感のある、プレミアム価格帯
- イメージ: 世界最高峰のカベルネ産地
覚え方: 「ナパ(Napa)= ナロー(Narrow、狭い)+ パワフル(Powerful)」
ソノマカウンティ(Sonoma County)の特徴
地理:
- 面積: ナパより広大で多様
- 位置: ナパの西側、太平洋に近い
- 栽培面積: ナパより広い
- サブA.V.A数: 17-18
ワインの特徴:
- 主要品種: ピノ・ノワール、シャルドネ、ジンファンデル
- スタイル: エレガントで多様性に富む、冷涼な気候を活かしたワイン
- イメージ: 多様性とバランスの産地
覚え方: 「ソノマ(Sonoma)= ソー(So)広い + ノーブル(Noble、高貴)なピノ」
ここがポイント!
- ナパは狭く細長い谷で、カベルネ・ソーヴィニヨンが主役
- ソノマは広大で多様、ピノ・ノワールとジンファンデルが主役
- ナパはパワフル、ソノマはエレガントなスタイル
最も混同しやすいA.V.A:Los Carneros
Los Carneros(ロス・カーネロス)の真実
Los Carnerosは、ナパとソノマの両郡にまたがる唯一のA.V.Aです。これが最大の混同ポイントです。
基本情報:
- 認定年: 1983年
- 総面積: 10,000エーカー以上
- ソノマ側: 6,813エーカー(約68%)
- ナパ側: 3,416エーカー(約32%)
- 位置: サンパブロ湾の北側、両郡の最南端
- 特徴: カリフォルニア初の「気候」によって定義されたA.V.A
気候と品種:
- 最も冷涼なサブリージョン
- 霧と風の影響が強い
- 主要品種: ピノ・ノワール、シャルドネ、スパークリングワイン用品種
Los Carnerosを正しく理解する覚え方
1. 面積比で覚える 「カーネロス(Carneros)の羊(スペイン語でCarneros=羊)は、ソノマに7割、ナパに3割」
- ソノマ側が約2倍の面積(68%)
- ナパ側は約3割(32%)
2. ラベル表記で見分ける
- 「Napa Valley, Los Carneros」→ ナパ側のブドウを使用
- 「Sonoma County, Los Carneros」→ ソノマ側のブドウを使用
- 「Los Carneros」のみ → どちらか、または両方のブレンド
3. イメージで覚える 「カーネロス=カウンティ(County)をまたぐ羊の群れ」

ここがポイント!
- Los Carnerosは両郡にまたがる唯一のA.V.A
- ソノマ68%、ナパ32%の面積比を覚える
- ラベル表記で「Napa Valley, Los Carneros」か「Sonoma County, Los Carneros」を確認
名前で混同しやすいA.V.A
Knights Valley(ナイツ・バレー)の罠
最も誤解されやすいA.V.Aです。
誤解: 「ナパの北部にあるから、ナパバレーのA.V.Aだろう」
真実: Knights Valleyはソノマカウンティに属します。
基本情報:
- 所属: ソノマカウンティ
- 位置: ナパバレー北西部(セント・ヘレナ、カリストガの西側)
- 特徴: カベルネ・ソーヴィニヨンの優れた産地
- 標高: やや高い丘陵地帯
覚え方: 「ナイト(Knight、騎士)はソノマ(Sonoma)の境界を守る」
- ナパの境界線に近いが、ソノマに属する
- 地図上でナパの西側を確認
Valley(バレー)のつくA.V.Aで混同を避ける
「Valley」がつくA.V.Aが多いため、どちらに属するか混乱しがちです。
ナパのバレー系A.V.A(少ない)
- Napa Valley(親A.V.A)
- Chiles Valley
- Wild Horse Valley
ソノマのバレー系A.V.A(多い)
- Sonoma Valley(親A.V.A)
- Alexander Valley
- Dry Creek Valley
- Russian River Valley
- Green Valley of Russian River Valley
- Knights Valley
覚え方: 「ソノマ(Sonoma)はバレー(Valley)の宝庫 = 6つ」 「ナパ(Napa)はバレー(Valley)が少ない = 3つだけ」
語呂合わせ: ソノマのバレー系=「ソ(Sonoma)・ア(Alexander)・ド(Dry Creek)・ロ(Russian River)・グ(Green Valley)・ナ(Knights)」
Mountain(マウンテン)のつくA.V.Aで区別する
ナパのマウンテン系A.V.A(多い)
- Howell Mountain
- Diamond Mountain District
- Spring Mountain District
- Mount Veeder
ソノマのマウンテン系A.V.A(少ない)
- Sonoma Mountain
- Bennett Valley(厳密にはMountainではないが山岳地帯)
覚え方: 「ナパ(Napa)はマウンテン(Mountain)4兄弟で力強い」 「ソノマ(Sonoma)はマウンテン(Mountain)1つでエレガント」
語呂合わせ: ナパのマウンテン系=「ハ(Howell)・ダ(Diamond)・ス(Spring)・マ(Mount Veeder)」
ここがポイント!
- Knights Valleyはナパの隣だがソノマ郡に属する
- 「Valley」がつくA.V.Aはソノマに多い(6つ)
- 「Mountain」がつくA.V.Aはナパに多い(4つ)
地理的位置で混同しやすいA.V.A
南部の混同ポイント
ナパ南部のA.V.A:
- Los Carneros(両郡共有)
- Oak Knoll District
ソノマ南部のA.V.A:
- Los Carneros(両郡共有)
- Sonoma Valley
- Bennett Valley
覚え方: 「南部でスパークリングといえばカーネロス(両方)」 「ナパ南部でカーネロス以外なら、オーク・ノール(Oak Knoll)」 「ソノマ南部はソノマ・バレー(Sonoma Valley)本拠地」
北部の混同ポイント
ナパ北部のA.V.A:
- Calistoga(最北端)
- St. Helena
- Diamond Mountain District
- Spring Mountain District
ソノマ北部のA.V.A:
- Alexander Valley
- Knights Valley
- Dry Creek Valley
- Rockpile
覚え方: 「カリストガ(Calistoga)=カリフォルニアの温泉=ナパ最北」 「アレクサンダー(Alexander)大王はソノマ北部を征服」
ここがポイント!
- 南部ではLos Carnerosが共有、ナパのみならOak Knoll
- 北部ではナパはCalistoga、ソノマはAlexander Valley
- 地理的な位置関係を地図で視覚的に覚える
主要品種で見分ける実践テクニック
カベルネ・ソーヴィニヨンの名産地で区別
ナパの「カベルネ御三家」
- Oakville(オークヴィル)
- Rutherford(ラザフォード)
- Stags Leap District(スタッグス・リープ・ディストリクト)
覚え方: 「ナパ(Napa)のカベルネ御三家 = ORS(オーアールエス)」
- Oakville
- Rutherford
- Stags Leap
ソノマのカベルネ代表
- Alexander Valley
- Knights Valley
覚え方: 「ソノマ(Sonoma)のカベルネ = AK(エーケー)」
- Alexander
- Knights
ピノ・ノワールの名産地で区別
ナパのピノ
- Los Carneros(ソノマと共有)のみ
ソノマのピノ(多数)
- Los Carneros(ナパと共有)
- Russian River Valley(ソノマ独自、最高峰)
- Sonoma Coast(ソノマ独自)
- Green Valley of Russian River Valley
覚え方: 「ピノといえばソノマ(Sonoma)の独壇場」 「ナパ(Napa)でピノ=カーネロスのみ」
ジンファンデルで一発判別
ジンファンデルはほぼソノマ
主要産地:
- Dry Creek Valley(ソノマ)
- Russian River Valley(ソノマ)
- Alexander Valley(ソノマ)
覚え方: 「ジンファンデル=ソノマ(Sonoma)の伝統」
- ナパでジンファンデルはほとんど見かけない
ここがポイント!
- カベルネはナパORS(Oakville, Rutherford, Stags Leap)
- ピノ・ノワールはソノマ独壇場(ナパはCarnerosのみ)
- ジンファンデルはほぼソノマ確定
混同を避けるための最終チェックリスト
ナパバレーA.V.Aの特徴まとめ
地理的特徴: ✓ 細長く狭い谷(南北35マイル、東西5マイル) ✓ 西にマヤカマス山脈、東にヴァカ山脈 ✓ 南端は海抜0、北端は362フィート
A.V.A構成: ✓ 18のサブA.V.A(2024年時点) ✓ Mountain系A.V.Aが多い(4つ) ✓ Valley系A.V.Aが少ない(3つ)
ワインスタイル: ✓ カベルネ・ソーヴィニヨンが主役 ✓ 力強く凝縮感のあるスタイル ✓ プレミアム価格帯が中心 ✓ 「世界最高峰のカベルネ産地」として認知
ソノマカウンティA.V.Aの特徴まとめ
地理的特徴: ✓ ナパより広大で多様 ✓ 太平洋に近く冷涼な地域が多い ✓ 様々な地形とミクロクリマ
A.V.A構成: ✓ 17-18のサブA.V.A ✓ Valley系A.V.Aが多い(6つ) ✓ Mountain系A.V.Aが少ない(1つ)
ワインスタイル: ✓ ピノ・ノワール、シャルドネ、ジンファンデルが主役 ✓ エレガントで多様性に富む ✓ 幅広い価格帯 ✓ 「多様性とバランスの産地」として認知
ここがポイント!
- ナパ:狭い谷、Mountain多い、カベルネ中心、プレミアム価格
- ソノマ:広大、Valley多い、ピノ・ジンファンデル、多様性
- この対比を頭に入れれば混同しない
実践:ワインラベルでの判別3ステップ
ステップ1:ラベルの表記を確認
ナパの表記:
- 「Napa Valley」
- 「Napa Valley, [サブA.V.A名]」
ソノマの表記:
- 「Sonoma County」
- 「Sonoma County, [サブA.V.A名]」
両方の可能性:
- 「Los Carneros」のみの表記
ステップ2:サブA.V.A名で即座に判別
ナパ確定のA.V.A:
- Oakville, Rutherford, Stags Leap District
- Yountville, St. Helena, Calistoga
- Howell Mountain, Diamond Mountain, Spring Mountain, Mount Veeder
- Oak Knoll District, Coombsville
- Chiles Valley, Wild Horse Valley, Atlas Peak
- Crystal Springs of Napa Valley
ソノマ確定のA.V.A:
- Russian River Valley, Alexander Valley, Dry Creek Valley
- Knights Valley, Sonoma Valley, Sonoma Coast
- Green Valley of Russian River Valley
- Chalk Hill, Bennett Valley, Sonoma Mountain
- Rockpile, Fort Ross-Seaview, Pine Mountain-Cloverdale Peak
- Fountaingrove District
両方の可能性:
- Los Carneros(詳しく確認が必要)
ステップ3:品種とスタイルで推測
カベルネ主体のワイン:
- ナパの可能性が高い
- 特に「Oakville」「Rutherford」「Stags Leap」ならナパ確定
ピノ・ノワール主体のワイン:
- ソノマの可能性が高い
- 「Russian River Valley」ならソノマ確定
- 「Los Carneros」の場合は両方の可能性
ジンファンデル:
- ほぼソノマ確定(特にDry Creek Valley)
ここがポイント!
- ステップ1:ラベル表記で「Napa Valley」か「Sonoma County」を確認
- ステップ2:サブA.V.A名で即座に判別(Knights Valleyはソノマ)
- ステップ3:品種で推測(カベルネ→ナパ、ピノ→ソノマ)
混同を避けるゴールデンルール5選
ルール1:「Los Carnerosは両方」を絶対に覚える
- ソノマ68%、ナパ32%の面積比
- ラベル表記で区別する
ルール2:「Knights ValleyはソノマだけNapa近くでもSonoma」
- 地図上でナパ境界近くに見えるが、ソノマに属する
- カベルネが有名だからといってナパではない
ルール3:「Valley多い=ソノマ、Mountain多い=ナパ」
- ソノマはValley系が6つ
- ナパはMountain系が4つ
ルール4:「品種で判断」
- カベルネ中心 → ナパ
- ピノ・ノワール中心 → ソノマ(カーネロス除く)
- ジンファンデル → ソノマ
ルール5:「御三家で覚える」
- ナパのカベルネ御三家:ORS(Oakville, Rutherford, Stags Leap)
- ソノマのカベルネ代表:AK(Alexander, Knights)
- ソノマのピノ御三家:Los Carneros, Russian River, Sonoma Coast
ここがポイント!
- Los Carnerosは両郡共有(68%ソノマ、32%ナパ)
- Knights Valleyはソノマ(ナパ境界近くだが実際はソノマ)
- 品種判別:カベルネ→ナパ、ピノ→ソノマ、ジンファンデル→ソノマ
まとめ:混同しないための最終アドバイス
ナパとソノマのA.V.Aを混同しないためには、以下の3つのポイントを押さえましょう:
-
Los Carnerosは特別
- 唯一の両郡共有A.V.A
- ラベル表記で判別する習慣をつける
-
地理的イメージを持つ
- ナパは狭く細長い(南北に長い)
- ソノマは広大で多様(太平洋に近い)
-
品種の傾向を理解する
- カベルネ=ナパ中心
- ピノ=ソノマ中心
- ジンファンデル=ソノマ独壇場
この知識があれば、ワインショップで「これはナパ?ソノマ?」と迷うことがなくなります。ラベルを見て即座に産地を判別できるようになれば、カリフォルニアワインの世界がさらに広がります。
次回ワインを選ぶ際は、ぜひこのガイドを思い出して、ナパとソノマの個性の違いを楽しんでください。両産地の特徴を理解することで、ワイン選びがもっと楽しくなるはずです。
参考文献
本記事は以下の情報源を参考にしています: