ナパバレー18のA.V.Aを完全攻略!特徴と簡単な覚え方
ナパバレーには現在**18のサブA.V.A(ネステッドA.V.A)**が存在します。それぞれが独自のテロワールと個性を持っていますが、すべてを覚えるのは大変です。この記事では、地理的特徴別に分類し、覚えやすい方法と共に各A.V.Aの特徴を解説します。
ナパバレーの地理的特徴
ナパバレーは、サンフランシスコの北40マイル、内陸40マイルに位置します。南北に35マイル(約56km)、最も広い地点で東西**5マイル(約8km)**の細長い谷です。
地形の特徴:
- 西側: マヤカマス山脈が連なる
- 東側: ヴァカ山脈が連なる
- 標高: 南端が海抜ゼロ、北端のカリストガで362フィート(110m)
- 気候: 地中海性気候(夏は暑く乾燥、冬は涼しく湿潤)
南北の気候差:
- 南部: サンパブロ湾に近く、霧の影響で冷涼
- 北部: 山に囲まれ温暖、昼夜の寒暖差が大きい
ここがポイント!
- ナパバレーは南北に細長い谷(約56km)
- 西はマヤカマス山脈、東はヴァカ山脈に囲まれている
- 南部は冷涼(霧)、北部は温暖という気候差が重要
18のA.V.Aを覚える3つのグループ
グループ1:山岳A.V.A(Mountain AVAs)
山岳地帯のA.V.Aは標高が高く、霧の影響を受けにくいのが特徴です。火山性土壌が多く、凝縮した力強いワインを生み出します。
東側(ヴァカ山脈)の山岳A.V.A
1. Atlas Peak(アトラス・ピーク)
- 標高: 760〜2,600フィート
- 認定年: 1992年
- 特徴: 火山性の岩がちな土壌、標高が高く霧の影響が少ない
- 覚え方: 「アトラス(地図帳)のように高い場所」
2. Howell Mountain(ハウエル・マウンテン)
- 標高: 1,400フィート以上(霧線の上)
- 認定年: 1983年(ナパ初のサブA.V.A)
- 特徴: 火山灰と岩の土壌、乾燥した温暖な山岳気候、凝縮感のある力強いワイン
- 覚え方: 「ハウ(How)高い!マウンテン」- ナパで最初のサブA.V.A
西側(マヤカマス山脈)の山岳A.V.A
3. Diamond Mountain District(ダイアモンド・マウンテン・ディストリクト)
- 特徴: 火山性土壌、険しい斜面
- 覚え方: 「ダイアモンドのように輝く火山の山」
4. Spring Mountain District(スプリング・マウンテン・ディストリクト)
- 特徴: 高標高、冷涼な気候、湧き水が豊富
- 覚え方: 「スプリング(湧き水・春)の山」
5. Mount Veeder(マウント・ヴィーダー)
- 特徴: 険しい斜面、少量生産、標高の高さが特徴
- 覚え方: 「Veeder = Leader(先導者)の山」- 高品質の証
その他の山岳A.V.A
6. Chiles Valley(チャイルズ・バレー)
- 位置: ヴァカ山脈の東側、バレーフロアから離れた場所
- 特徴: 温暖で乾燥、昼夜の寒暖差が大きい
- 覚え方: 「チャイルド(子供)が隠れた谷」- 奥まった場所
7. Wild Horse Valley(ワイルド・ホース・バレー)
- 位置: 南東部の高地
- 特徴: ナパとソノマにまたがる、強風が特徴
- 覚え方: 「ワイルド(野生)な馬が走る風の谷」
グループ2:バレーフロアA.V.A(Valley Floor AVAs)
谷底の平坦地から緩やかな傾斜地に位置するA.V.Aです。沖積土壌が多く、エレガントでバランスの取れたワインを生み出します。
南から北へ順番に覚える方法:「カロオヨルセカ」
- Carneros(カーネロス)
- ros Carneros(ロス・カーネロス)
- Oak Knoll(オーク・ノール)
- Yountville(ヨントヴィル)
- Rutherford(ラザフォード)
- St. Helena(セント・ヘレナ)
- Calistoga(カリストガ)

それぞれの特徴を見ていきましょう:
8. Los Carneros(ロス・カーネロス)
- 位置: 最南端、ナパとソノマにまたがる
- 認定年: 1983年
- 特徴: ナパで最も冷涼、霧と風の影響が強い、粘土質の浅い土壌
- 主要品種: ピノ・ノワール、シャルドネ、スパークリングワイン
- 覚え方: 「カーネロス = カー(car)無し」- 霧で視界が悪い最南端
9. Oak Knoll District(オーク・ノール・ディストリクト)
- 位置: ロス・カーネロスの北
- 特徴: 比較的冷涼、霧の影響を受ける、シャルドネやメルローに適する
- 覚え方: 「オーク(樫の木)のこぶ(knoll)」- 丘陵地帯
10. Yountville(ヨントヴィル)
- 位置: バレーフロア中南部
- 特徴: バランスの取れた気候、カベルネ・ソーヴィニヨンの名産地
- 覚え方: 「ヨント(Yount)さんの町」- 開拓者George Yountが由来
11. Stags Leap District(スタッグス・リープ・ディストリクト)
- 位置: バレーフロア東側、ヴァカ山脈の麓
- 特徴: 絹のようになめらかなカベルネ、火山性土壌と霧の影響
- 覚え方: 「雄鹿(Stag)が跳ぶ(Leap)崖」- 伝説に由来
12. Oakville(オークヴィル)
- 位置: バレーフロア中央部
- 特徴: ナパで最も名声の高いA.V.Aの一つ、力強くエレガントなカベルネ
- 覚え方: 「オーク(樫)の町」- プレミアムカベルネの代名詞
13. Rutherford(ラザフォード)
- 位置: オークヴィルの北
- 特徴: 「ラザフォード・ダスト」と呼ばれる独特の土壌由来の味わい、沖積土壌
- 主要品種: カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、カベルネ・フラン
- 覚え方: 「ラザフォード・ダスト(埃)」- 土っぽいタンニンが特徴
14. St. Helena(セント・ヘレナ)
- 位置: バレーフロア北部
- 特徴: 歴史的なワイナリーが多数、温暖な気候
- 覚え方: 「聖(St.)ヘレナ山」- ナパのシンボル的な町
15. Calistoga(カリストガ)
- 位置: 最北端
- 認定年: 2010年
- 特徴: ナパで最も暑い昼間の気候、夜は涼しい(大きな昼夜温度差)
- 覚え方: 「カリフォルニア(Cali)のサラトガ(Saratoga)= Calistoga」- 温泉でも有名
グループ3:東側の特別なA.V.A
16. Coombsville(クームズヴィル)
- 位置: ナパ市の東側
- 認定年: 2011年
- 特徴: 比較的新しいA.V.A、霧の影響と火山性土壌のバランス
- 覚え方: 「Coomb(谷間)の町」- 2011年認定の新しいA.V.A
17. Crystal Springs of Napa Valley(クリスタル・スプリングス)
- 位置: ヴァカ山脈の西斜面
- 認定年: 2024年11月(ナパ最新のA.V.A)
- 面積: 約4,000エーカー、すべて丘陵地帯
- 覚え方: 「クリスタル(水晶)の湧き水」- 最新のA.V.A
ここがポイント!
- 山岳A.V.A(Mountain)は標高が高く、凝縮したワインを生む
- バレーフロア(Valley Floor)は南から北へ「カロオヨルセカ」で覚える
- 最新のA.V.Aはクリスタル・スプリングス(2024年)
A.V.A名を覚える実践テクニック
テクニック1:地図のイメージで覚える
南から北へ縦のライン:
- ロス・カーネロス(最南端・霧)
- オーク・ノール
- ヨントヴィル
- オークヴィル
- ラザフォード
- セント・ヘレナ
- カリストガ(最北端・温泉)
西の山脈(マヤカマス):
- ダイアモンド・マウンテン
- スプリング・マウンテン
- マウント・ヴィーダー
東の山脈(ヴァカ):
- アトラス・ピーク
- ハウエル・マウンテン
テクニック2:特徴で分類して覚える
冷涼 & スパークリング:
- ロス・カーネロス(ピノ・ノワール、シャルドネ、スパークリング)
プレミアム・カベルネ御三家:
- オークヴィル
- ラザフォード
- スタッグス・リープ・ディストリクト
山岳パワフル系:
- ハウエル・マウンテン(最も歴史が古い)
- アトラス・ピーク
- ダイアモンド・マウンテン
- スプリング・マウンテン
- マウント・ヴィーダー
最新の仲間入り:
- クームズヴィル(2011年)
- カリストガ(2010年)
- クリスタル・スプリングス(2024年)
テクニック3:語呂合わせで覚える
山岳A.V.Aの語呂合わせ: 「**ハウ(How)ア(Atlas)ダイヤ(Diamond)? スプリング(Spring)にマウント(Mt. Veeder)」 = Howell Mountain, Atlas Peak, Diamond Mountain, Spring Mountain, Mount Veeder
バレーフロアの語呂合わせ: 「カロオヨルセカ」 = Carneros, Oak Knoll, Yountville, Rutherford, St. Helena, Calistoga
ここがポイント!
- 地図のイメージ(南北、東西の山)で位置を把握する
- 特徴(冷涼、カベルネ、山岳)でグループ分けする
- 語呂合わせ「カロオヨルセカ」を活用する
ナパバレーのテロワールの多様性
ナパバレーには100種類以上の異なる土壌タイプが存在します。
主要な土壌タイプ:
- 火山性土壌: 山岳地帯に多く、水はけが良く、ワインにミネラル感を与える
- 沖積土壌: 古代の川床が堆積したもので、複雑な風味の発達を促進
- 粘土とローム: 水分を保持し、よりソフトでフルーティなワインを生み出す
栽培面積と品種:
- 総栽培面積: 45,275エーカー以上(約18,300ヘクタール)
- ワイナリー数: 450以上
- 主要品種: カベルネ・ソーヴィニヨン、シャルドネ、ピノ・ノワール、メルロー、ジンファンデルなど
ここがポイント!
- 100種類以上の土壌タイプが存在する多様性
- 火山性土壌はミネラル感、沖積土壌は複雑さを生む
- カベルネ・ソーヴィニヨンが圧倒的な主要品種
まとめ:18のA.V.Aを攻略するポイント
- 地理的グループで覚える: 山岳(東西)、バレーフロア(南北)、特別地区
- 気候の特徴を理解する: 南は冷涼(霧)、北は温暖、山は標高による
- 主要品種との関連: カーネロスはスパークリング、中央部はカベルネ
- 歴史を知る: ハウエル・マウンテン(1983年)が最初、クリスタル・スプリングス(2024年)が最新
- 土壌の違い: 山岳は火山性、バレーフロアは沖積土壌
ナパバレーのワインを選ぶ際は、ラベルに記載されたA.V.Aに注目してください。それぞれのA.V.Aが持つ独特のテロワールが、カベルネ・ソーヴィニヨンやシャルドネに個性を与えています。この記事で紹介した覚え方を使えば、18のA.V.Aを楽しく学べるはずです。
次回ワインショップやレストランでナパバレーのワインを手に取る時、「これはオークヴィルだから力強くエレガント」「カーネロスだからスパークリングに最適」と、A.V.Aの特徴を思い出しながら選んでみてください。ワインの楽しみ方が一層深まるはずです。
参考文献
本記事は以下の情報源を参考にしています:
- Napa Valley AVA and Its 17 Nested Sub-AVAs: Key Characteristics
- Discover the terroir of Napa Valley through its vineyards
- Napa Valley Nested AVAs | Napa Vintners
- Napa Valley AVA - Wikipedia
- A Simple Guide to Napa Wine (Map) | Wine Folly
- What Makes Napa Valley Ideal for Growing Wine Grapes?
- Napa Valley Terroir